私は毎日のコントラバスの練習の最初にロングトーン練習をします。
昔は、いきなり音階の練習をしたり、エチュードをさらい始めたりしていましたが、最近はまずロングトーン練習をします。
ロングトーンをしていると、少しずつ心が落ち着き、心が練習モードに入るというか、練習に対する集中力が高まる気がします。
この記事では、私が感じているロングトーンのコツについてご紹介します。
ロングトーン練習
ロングトーン練習は、一つの音を長く伸ばして弾く練習です。
私は、駒の上 1cm 〜 2cm くらいのところを8拍とか16拍で弾いています。
ロングトーン中は、次のようなことを意識しながら弾いています。
フォーム
そもそも変なフォームで弾いていると、体に間違ったフォームを覚え込ませてしまうので、よくありません。
力が入っていると、音の伸びがなくなったり、体を痛めてしまうこともあるので、最低限必要な力以外は脱力する必要があります。
鏡を見ながら、次のようなことを意識しながら練習します。
音量
ロングトーン中に、音量が大きくなったり、小さくなったりしていないかを確認します。
弓の速さが、速くなったり遅くなったりすると、音量が変化します。
視覚的に、弦の振幅が広くなったり狭くなったりしていると、音量が変わっている目印です。
音量を一定に保つためには、次のようなことを意識しながら弾いています。
弓の速度が一定になっているか
弓の速度を常に一定にしようと右手で速さをコントロールすると、逆に速くなったり遅くなったりして、音が震えます。
弓は動き出すと、弦との摩擦で減速していきますが、基本そのまま動こうとします。
右手は、弓と弦の摩擦で遅くなる分を補って、あとは弓が進む惰性を感じて、それに任せたほうが速度が安定すると思います。
音質
ロングトーン中に、音質が固くなったり、柔らかくなったりしていないかを確認します。
弦にかかる重さが、重くなったり、軽くなったり、また、弾いている位置が駒よりになったり、指板よりになったりすると、音質が変化します。
音質を一定に保つためには、次のようなことを意識しながら弾いています。
弦にかかる重さが一定になっているか
「てこの原理」で、元弓は重さがかかりやすく、先弓は重さがかかりにくくなります。
弦にかかる重さを一定にするには、弓にかける腕の重さを調整する必要があります。
しかし、弦にかかる重さを常に一定にしようと右手で重さをコントロールすると、逆に重くなったり軽くなったりして、音が震えます。
弾くときの弦の摩擦抵抗を意識して、弓元から弓先まで同じ抵抗になっているのを感じながら、弓が進む惰性に任せたほうが弦にかかる重さが安定すると思います。
同じ位置が弾けているか
人の腕は、肩を中心に円運動をします。
そのため、弓を普通に弾くと、弓元ほど駒よりに、弓先ほど指板よりに弾く位置が移動してしまいます。
弾く位置が移動すると、音質が変わってしまいます。
同じ位置を弾くためには、円運動を直線運動に変える必要があります。
肩、肘、手首、指を柔軟に使います。
特に肘がピンと伸びすぎていると、弾く位置が変わってしまうので、少し余裕をもたせて置くといいと思います。
また、フィンガーボウイングをするときの、中指の動きで弓先が上がったり、下がったりすることもあるので、中指の動きを意識するといいと思います。
呼吸
ロングトーン中の呼吸もとても大切です。
ロングトーンのテンポに比べ速すぎると、音量や音質に変化が出やすくなります。
ロングトーン中の呼吸について、次のようなことを意識しながら弾いています。
呼吸がとまっていないか
呼吸を止めると、筋肉が緊張して関節の動きがかたくなり、リラックスした脱力状態で弾くことができなくなります。
つねに呼吸ができていることを意識すると
ロングトーンのテンポ感にあった速さで呼吸をする必要があります。
ロングトーンのときはゆっくり吸い込み、ゆっくり吐き出すことを意識すると、音も安定すると思います。
テンポにあった呼吸ができているか
ロングトーン中にいきなり速い呼吸をすると、筋肉が緊張して音に影響します。
また、息を吸う速さと息を吐く速さが異なっても音に影響が出ます。
例えば4拍かけてゆっくり息を吸い、4拍かけてゆっくり息を吐くといったようにゆっくり呼吸をしたほうがリラックスした状態で安定した音が出せると思います。
弓の返し
弓の切り返しの前後は、弓のコントロールが特に難しいところです。
この部分のコントロールが上手く行かないと、音量や音質に影響が出ます。
また、この部分が上手に使えるかどうかで、他の人が聞いたときに「うまいな」と思われるか、「なんか幼稚な感じだな」と思われるかが決まります。
弓の切り返しの前後で、次のようなことを意識しながら弾いています。
切り返し前後で弓の速度が一定になっているか
弓の切り返しの前に、切り返す準備を行います。
右腕は方向転換するために減速します。
右手は方向転換の衝撃を和らげるためにフィンガーボウイングをします。
意識するのは、「右腕の動きによる弓の速度+フィンガーボウイングによる弓の速度」が、「弓中を弾いているときの弓の速度」に等しくなっているかということです。
右腕+フィンガーボウイングの方が速くなっていると、音量が増します。
逆に、遅くなっていると、音量が減ります。
また、音をはっきり出そうとして、切り返し後の弓の速度が早くなると、音量が増します。
アクセントがつかないようにそっと返しすぎると、弓の速度が遅くなり、音量が減ります。
弓中を弾くときの腕の速度 = 切り返し前の腕の速度+フィンガーボウイング = 切り返し後の腕の速度
を意識します。
それぞれの動きを確認するときは、右腕の速さやフィンガーボウイングに集中しますが、それぞれの動きができた後は、弓の速度が一定になっていることに注目したほうが音が安定しやすいと思います。
切り返し前後で弦にかかる重さが一定になっているか
上にも書いたとおり、切り返し前には準備のために、右腕の減速とフィンガーボウイングを行います。
弓中を弾いていたときにはない動作なので、これらの準備が始まると、弦にかかる重さのコントロールが難しくなります。
弦にかかる重さが重くなると、音質がかたくなります。
逆に、重さが軽くなると、柔らかくなります。
さらに、重さが軽くなると、弓の返しで引っかからなくなるので返したあとの音がかすれてしまいます。
かすれないように重くすると、返したあとの音にアクセントがついてしまいます。
フィンガーボウイング中も、弦につねに同じ重さがかかるように、弦との摩擦抵抗と弓が進む惰性を感じながら弾くと音が安定しやすいと思います。
弓元は右手の動きが特に音に出やすい場所なので、特に意識を集中する必要があります。
長い拍を弾けない場合は?
楽器を初めて間もないときは、8拍伸ばすのも難しい場合があります。
たとえば、8拍しか伸ばせないのに、いきなり16拍伸ばすのは無理な話です。
そんなときは、1拍ずつ増やしていくと簡単に伸ばせる拍数を増やすことができます。
いきなり弓の使う量を、半分にするのは難しくても、1拍あたり 1/8 ずつ少なくするのはそんなに難しくはありません。
途中で止まってしまうんだけど?
ロングトーンの拍数を多くしていくと、アップに切り返したときなどに、途中で弓が止まってしまうことがあります。
そんなときは、次のようなことをチェックしてみてください。
まとめ
この記事では、私が感じているロングトーンのコツについてご紹介しました。
ロングトーンで安定した音が出せるようになると、弓を細かくコントロールすることができるようになります。
また、出しやすい音量でロングトーン練習するだけでなく、次のようなバリエーションを付けて練習すると、さらに細かいコントロールができるようになります。
練習の参考になりましたら幸いです。